「腸内フローラ」「善玉菌」「悪玉菌」。テレビや雑誌、食品のパッケージで、よく目にする言葉です。
でも、「フローラって結局なに?」「悪玉菌は少ないほどいいの?」「日和見菌って聞いたことはあるけど…」と、いざ説明しようとすると、言葉に詰まる方も多いのではないでしょうか。
この記事で分かることは、次の3つです。
- 「腸内フローラ」とは何か。なぜ「お花畑」と呼ぶのか
- 善玉菌・悪玉菌・日和見菌は、それぞれどんな菌のことか
- よく聞く「2:1:7」という割合を、どう受け止めればいいか
できるだけ、医学や栄養学の資料に書かれていることをもとにお話しします。順番に見ていきましょう。
腸内フローラとは、腸にすむ菌の「集まり」のこと
腸内フローラとは、私たちの腸の中にすんでいる、たくさんの菌の集まりのことです。正式には「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と呼びます。
その数は、約1,000種類、100兆個とよく紹介されます。滋賀医科大学の安藤朗先生が日本内科学会の学会誌に書いた解説(2015年)にも、そう書かれています。
なぜ「お花畑」なの?
菌たちは、腸の中でばらばらに散らばっているわけではありません。同じ解説によると、それぞれが「なわばり」を保ちながら、全体として1つの集団をつくっています。
種類ごとにまとまって並ぶ様子は、品種ごとに咲くお花畑のようです。そのため、「お花畑」を意味する「フローラ(flora)」という言葉で呼ばれています。正式名の「叢(そう)」は「草むら」という意味です。どちらも、菌が群れをつくっている様子を表した言葉です。
菌の数は「数え方」で幅がある
ひとつ知っておきたいのは、この「100兆個」という数字には幅があることです。
2016年に、海外の研究者が人の体にいる細菌の数を計算し直した論文があります。それによると、体重70kgの成人男性の体にいる細菌は約38兆個、重さは約0.2kgと見積もられました(PLOS Biology誌)。
昔から紹介されてきた「100兆個」とは、ずいぶん違いますね。調べ方や計算の仕方で、数字は変わります。ただ、どちらにしても、とてつもなく多くの菌が、私たちのお腹で暮らしていることに変わりはありません。
菌がいちばん多いのは「大腸」
腸内の菌は、腸のどこにでも同じだけいるわけではありません。先ほどの安藤先生の解説によると、胃では胃酸のために菌はぐっと少なくなり、小腸の終わりあたりから一気に増えて、大腸でいちばん多くなります。
腸内フローラの話は、多くの場合、この大腸の菌の話だと考えると分かりやすいでしょう。
「善玉菌・悪玉菌・日和見菌」は、分かりやすくするための呼び名
約1,000種類もの菌を、ひとつずつ覚えるのは大変です。そこで、働きによって大きく3つのグループに分ける呼び方が、広く使われています。それが「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌(ひよりみきん)」です。
ここで大事なのは、これは医学の正式な分類ではなく、分かりやすくするための「通称」だということです。女子栄養大学が公開している講座資料でも、「通称」と書かれています。正式な分類がある菌を、働きに注目して、ざっくり3つに分けた呼び名と考えてください。

善玉菌:酸をつくり、お腹の中を弱い酸性に保つ菌
善玉菌は、体にとって好ましい働きをすると言われる菌のグループです。代表は、乳酸菌とビフィズス菌です。
公益財団法人長寿科学振興財団の「健康長寿ネット」では、善玉菌は乳酸や酢酸をつくり、腸の中を弱い酸性に保つ、と説明されています。
なぜ「酸性」が大事なのでしょうか。安藤先生の解説には、腸の中が酸性になると、ウェルシュ菌のような有害な菌が増えにくくなる、と書かれています。善玉菌は、自分たちがつくる酸で、ほかの菌が暮らしにくい環境をつくっている、とイメージすると分かりやすいでしょう。
悪玉菌:体にとって好ましくない物質をつくる菌
悪玉菌は、体にとって好ましくない働きをすると言われる菌のグループです。健康長寿ネットでは、ウェルシュ菌やブドウ球菌、毒性のあるタイプの大腸菌が例に挙げられています。
代表的なウェルシュ菌は、安藤先生の解説によると、タンパク質を腐らせて、アンモニアなどの有害な物質をつくる菌の1つです。
日和見菌:その時々で、優勢な側につく菌
日和見菌は、善玉菌にも悪玉菌にも、はっきりとは分けられない菌のグループです。健康長寿ネットでは、バクテロイデスという菌や、毒性のないタイプの大腸菌などが例に挙げられています。
「日和見」とは、その場の形勢を見て、有利な側につくことです。健康長寿ネットでは、日和見菌は善玉菌と悪玉菌のうち、優勢な方と同じような働きをすると説明されています。
また、女子栄養大学の資料では、「ふだんは人に害はないが、体が弱ってくると悪さをする」菌として説明されています。資料によって言い方は少し違いますが、いつも同じ働きをするとは限らない菌、という点は共通しています。
同じ名前の菌でも、グループが分かれることがある
ここで、1つ気づくことがあります。「大腸菌」が、悪玉菌(毒性のあるもの)と日和見菌(毒性のないもの)の両方に入っていることです。
同じ「大腸菌」という名前でも、タイプ(株)によって性質が違うからです。このように、3つのグループ分けは、あくまで目安です。きっちり線が引けるものではない、と知っておくと、情報に振り回されにくくなります。
「2:1:7」は、目安として受け止める
腸内フローラの話でよく出てくるのが、「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」という割合です。健康長寿ネットでも、この割合が理想として紹介されています。
ただし、女子栄養大学の資料には、「理想的な菌種の配分は人によって違います」と書かれています。この数字は、誰にでも当てはまる正解というより、考え方をつかむための目安として受け止めるのがよさそうです。
数字から分かるのは「日和見菌がいちばん多い」こと
この目安で注目したいのは、割合の細かな数字よりも、日和見菌がいちばん大きなグループだということです。
善玉菌と悪玉菌を合わせても、3割ほどです。ただ、残りの7割にあたる日和見菌は、優勢な側と同じような働きをすると説明されています。健康長寿ネットの説明に沿って考えると、善玉菌と悪玉菌のどちらが優勢かによって、いちばん大きなグループの働き方も変わる、ということになります。

大事なのは「バランス」という考え方
ここから、「腸内フローラはバランスが大事」と言われる理由が見えてきます。
悪玉菌を1つ残らずなくす、という話ではありません。たくさんの菌がいる中で、どちらの勢いが強いか。腸内フローラは、そうした全体の「バランス」で考えるもの、と説明されることが多いようです。
腸内フローラは、人それぞれ。そして変わっていく
腸内フローラの顔ぶれは、人によって違います。安藤先生の解説によると、大人になってからの腸内フローラは比較的安定していて、一人ひとりに特有のパターンがあるとされています。

生まれてからの環境で、土台ができる
同じ解説には、双子を比べた研究から、腸内フローラの決まり方には遺伝よりも、生まれてから離乳期までの環境の影響が大きいと考えられている、とも書かれています。
年齢によっても変わる
腸内フローラは、年齢によっても変わります。安藤先生の解説によると、赤ちゃんのころはビフィズス菌が多く、離乳期に大人の型へと変わります。そして、中高年を過ぎるころから、ビフィズス菌が減り、ウェルシュ菌が増えるという変化が見られるとされています。
食事や薬でも変わる
大人になってからも、食事や抗生物質などの影響で、腸内フローラの中身には変化が起きると説明されています。
つまり腸内フローラは、生まれつき決まっていて変えられないもの、というわけではありません。食事や薬などの影響で、中身が変わることがあると説明されています。
日常でできること:毎日の食事を「菌の目線」で見てみる
ここからは、研究の話ではなく、日々の食事の話です。
安藤先生の解説には、腸内の菌が食物繊維を発酵させて、酢酸などの酸をつくると書かれています。食物繊維を含む食品は、腸の菌にとっての「食べもの」にもなる、ということです。特別なことより、毎日の献立に、たとえば次のような食品を無理のない範囲で取り入れてみてください。

- 野菜・豆・きのこ・海藻など:食物繊維を含む食品です
- ヨーグルト・納豆・みそ・ぬか漬けなど:菌の働きでつくられる発酵食品です
- オリゴ糖を含む食品:女子栄養大学の資料では、タマネギなどが善玉菌のエサを多く含む食品として挙げられています
女子栄養大学の資料では、善玉菌をとることを「プロバイオティクス」、善玉菌のエサになるオリゴ糖や食物繊維などをとることを「プレバイオティクス」と紹介しています。「菌そのもの」と「菌のエサ」の違いは、別の記事で詳しくまとめています。
気をつけたいこと
食物繊維やオリゴ糖は、一度にたくさんとると、体質や体調によってはお腹がゆるくなったり、張ったりすることがあります。少しずつ、様子を見ながら取り入れてください。
また、お腹の不調が続くときは、食事だけで何とかしようとせず、医療機関を受診してください。持病のある方や、薬を飲んでいる方は、食事の変え方についても医師にご相談ください。
よくある疑問
Q. 悪玉菌は、ゼロにしたほうがいいのですか?
この記事で紹介した資料には、悪玉菌をなくすという話は出てきません。書かれているのは、善玉菌と悪玉菌のどちらが優勢か、という見方です。また、「善玉・悪玉」は分かりやすくするための呼び名で、きっちり線が引けるものではありません。「悪玉菌=すべて悪いもの」と単純に考えず、全体のバランスで捉えるのがよいでしょう。
Q. 自分の腸内フローラの割合は分かりますか?
腸の中の菌の多くは、取り出して育てることが難しいとされています。そのため研究では、DNAを手がかりに調べる方法が使われています(安藤先生の解説より)。ご自身のお腹の状態が気になる方は、医師にご相談ください。
Q. 「2:1:7」に近づけないといけないのですか?
先ほどお話ししたとおり、理想的な配分は人によって違うとされています。数字そのものを目標にするより、毎日の食事全体を見直すきっかけとして受け止めてください。
まとめ:腸内フローラは「いろいろな菌が暮らすお花畑」
この記事の要点は、次の3つです。
- 腸内フローラは、腸(特に大腸)にすむたくさんの菌の集まり。種類ごとにまとまる様子が、お花畑(フローラ)にたとえられています
- 善玉菌・悪玉菌・日和見菌は、働きに注目して分けた「通称」です。いちばん多い日和見菌は、優勢な側と同じような働きをすると言われています
- 「2:1:7」は目安です。理想の配分は人それぞれ。大切なのは、全体の「バランス」という考え方です
今日からできることは、今日の食事の中に、野菜・豆・海藻などの食物繊維を含む食品と、発酵食品が入っているか、ひとつ確かめてみることです。お腹の中の菌の目線で、食卓を見てみましょう。
関連する記事も、あわせてご覧ください。
毎日の腸活に、ケストースを取り入れてみませんか
ここまでの内容は、腸内フローラについての一般的な情報です。ケストースの働きを示すものではありません。
中屋商店のケストースは、善玉菌のエサになるオリゴ糖「ケストース」を100%配合しています。3糖で構成される、最小単位のオリゴ糖です。3g×30包入りで、1日1包を目安に、ヨーグルトや飲み物に加えてお使いいただけます。ほのかな甘みがあります。
価格などの詳細は、商品ページをご確認ください。
この記事は、食生活に関する一般的な情報をお伝えするものです。病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。体調に不安がある方、持病のある方、症状が続く方は、医師にご相談ください。
参考にした情報
- 安藤朗「腸内細菌の種類と定着:その隠された臓器としての機能」日本内科学会雑誌 104(1):29-34(2015)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/1/104_29/_pdf
- 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「腸内細菌叢(腸内フローラ)とは」https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenko-cho/chonai-saikin.html
- 女子栄養大学 ウェブ講座⑤「腸内細菌叢の力」(執筆:太田敏子)https://llab.eiyo.ac.jp/ions/wp_dr/wp-content/uploads/2023/04/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%96%E8%AC%9B%E5%BA%A75.pdf
- Sender R, Fuchs S, Milo R. Revised Estimates for the Number of Human and Bacteria Cells in the Body. PLOS Biology(2016)https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.1002533