腸と免疫の関係|「免疫細胞の約7割が腸に」と言われる理由と、研究で分かってきたこと

朝の光が入る木の食卓に、みそ汁、ごはん、漬物、納豆、ヨーグルト、果物が並んでいる

「免疫細胞の約7割は腸にある」という話を、聞いたことがある方は多いかもしれません。でも、なぜ食べものを消化する腸に、体を守るしくみが集まっているのでしょうか。

この記事で分かることは、次の3つです。

  • 腸に免疫のしくみが集まっている理由と、「約7割」という数字の受け止め方
  • 腸の中で免疫が働く流れと、腸内細菌との関係
  • 研究で分かってきたこと、まだ分かっていないこと

研究論文と、理化学研究所の発表をもとにお話しします。マウスの研究と人の研究は、分けて紹介します。

腸は、体の中にある「外の世界との境目」

腸に免疫のしくみが集まっている理由を一言で言うと、腸が、外から来たものと毎日向き合う場所だからです。

口から入ったものは、体の中を通っていても、腸の壁を越えるまでは「体の外」にあるものと考えることができます。理化学研究所の発表では、腸の粘膜は食べもの、一緒に入ってくる微生物、40兆個にも及ぶ腸内細菌などに、常にさらされていると説明されています。

たとえるなら、腸は人と荷物が絶えず行き来する空港の入国審査のような場所です。必要な栄養は通し、害になりそうなものは止める。この見分けが、毎日続いています。

しかも、腸の中と体の組織を隔てているのは、一層の細胞と、その表面をおおう粘液の層です。研究論文では、この薄い境目を保つしくみの1つとして、免疫の働きが紹介されています。

「約7割」は、総説論文に書かれた目安の数字です

医学雑誌の総説論文(これまでの研究をまとめた論文)には、腸の免疫組織は全身の免疫系のほぼ70%にあたると書かれています。抗体を作る細胞(形質細胞)も、約80%がここにいるとされています。

ただし、この数字はその論文の要旨で確かめたもので、元になった測定までは、私たちは確かめられていません。「腸にはとても多くの免疫細胞が集まっている」ことを示す目安として受け止めるのがよさそうです。

また、「免疫細胞が多い」ことと「腸によいものを食べると免疫が強くなる」ことは、別の話です。この点は、あとの節でお話しします。

腸の免疫は「見本を取り込んで、抗体を作る」流れで働く

腸の免疫の中心の1つが、小腸にあるパイエル板です。免疫細胞が集まってできた組織で、腸の見張り所のような場所です。

ここで大事になるのが抗体です。抗体とは、特定の相手にくっつく、たんぱく質でできた目印のようなものです。IgA(アイジーエー)はその1種類で、腸の中で働きます。

理化学研究所の解説をもとに流れを整理すると、次のようになります。

  1. 取り込む:パイエル板をおおう細胞の中にいるM細胞が、腸の中の細菌などを取り込みます
  2. 受け渡す:取り込まれたものは、近くの樹状細胞に渡されます。樹状細胞は「こんな相手がいた」と伝える連絡係です
  3. 育てる:T細胞が情報を受け取り、その後、IgAという抗体を作るB細胞が育ちます
  4. 腸の中へ出す:IgAが腸の中に放出され、相手を排除する働きを助けます

腸の免疫の流れを示した図。パイエル板のM細胞が腸の中の細菌などを取り込み、樹状細胞に渡し、T細胞に伝わって、IgAを作るB細胞が育ち、IgAが腸の中に放出される

腸内細菌と免疫は、お互いに影響しあっている

腸内細菌は、免疫に「見張られる」だけの相手ではありません。免疫のしくみが育つことにも関わっている、と考えられています。腸内細菌そのものについては、腸内フローラの記事で詳しくまとめています。

ここからの2つの話は、どちらも動物の研究が中心です。食品や商品の働きを示すものではありません。

菌がいない動物では、腸の免疫が十分に育たない

腸内細菌と免疫の関係は、無菌の環境で育てた動物を、ふつうの動物と比べることで調べられてきました。

2020年の総説論文によると、無菌の動物では腸のリンパ組織(免疫細胞が集まる組織)のつくりや、免疫の働きに大きな不足が見られます。IgAも大きく少なくなりますが、菌が腸にすみつくと、速やかに回復すると説明されています。

腸の上皮(腸の内側をおおう細胞の層)にいるリンパ球(免疫細胞の1種)も、無菌のマウスでは少なく、菌がすみつくと強く誘導されるとされています。

無菌の動物と、菌がすみついたあとを比べた図。無菌の動物ではIgAが大きく少なく、腸の上皮にいるリンパ球も少ない。菌がすみつくと、IgAは速やかに回復し、リンパ球は強く誘導される

免疫には「ブレーキ役」の細胞もいる

免疫は、強く働けばよいというものではありません。理化学研究所の発表では、制御性T細胞を、炎症やアレルギーの発端となる過度の免疫応答を抑える細胞と説明しています。いわば免疫のブレーキ役です。

同じ発表では、食物繊維の多いエサを与えたマウスで、腸内細菌が作る酪酸を介して制御性T細胞が増えたと報告されています。酪酸については、短鎖脂肪酸の記事で詳しく紹介しています。

人の研究では、どこまで分かっている?

マウスで起きたことが、そのまま人に当てはまるとは限りません。先ほどの2020年の総説論文でも、実験用マウスでの影響は、人とは大きく異なることがあると指摘されています。

人で調べた研究の例を1つ紹介します。

健康な成人で食事の影響を調べた、17週間の試験(2021年)

アメリカの研究チームは、健康な成人を2つのグループに分けて調べました。食物繊維の多い食事のグループと、発酵食品の多い食事のグループです。17週間の試験で、各グループ18人でした。論文の要旨では、次のように報告されています。

  • 発酵食品の多い食事:腸内細菌の多様性(菌の種類の幅広さ)が上がり、炎症の目印が下がりました
  • 食物繊維の多い食事:多様性は変わらず、糖を分解する酵素の遺伝子が増えました。この試験で最も重視した免疫の指標(サイトカイン反応スコア)は変わりませんでした。開始時の多様性によって、免疫の変化は3つのパターンに分かれました

この結果から、どちらの食事がよいと決めることはできません。人数が少なく、対象は健康な成人で、期間も17週間です。病気を防げるかどうかを調べた試験でもありません。

腸と免疫の研究で分かってきたことと、まだ分かっていないことを並べた図。分かってきたことは、腸に多くの免疫細胞が集まること、腸内細菌が免疫の育ちに関わること、食事で腸内細菌や免疫の指標が変わる例があること。まだ分かっていないことは、マウスの結果が人にどこまで当てはまるか、特定の食品で感染症や病気を防げるか、どの食事が誰に合うか

毎日の食事の一例:菌のエサと発酵食品を食卓に並べる

ここまでの研究から、「これを食べれば免疫が強くなる」とは言えません。ここからは研究の結果ではなく、中屋商店からの、毎日の食事の一例です。腸内細菌のエサになるものと発酵食品を、無理なく食卓に並べるという考え方です。

  • 菌のエサになるもの(食物繊維やオリゴ糖を含む食品の例):麦ごはん、ごぼう、玉ねぎ、きのこ、海藻、豆、果物など
  • 発酵食品:みそ、納豆、漬物、ヨーグルトなど

特別な献立にしなくても、みそ汁の具をきのこや海藻にする、納豆を1品足すといった形で取り入れられます。組み合わせの例は、発酵食品の記事でご紹介しています。

家族の朝の食卓で、みそ汁のおわんを手渡している手元

よくある疑問

Q. 発酵食品や食物繊維をとれば、風邪をひきにくくなりますか?

この記事で紹介した研究からは、そこまでは言えません。2021年の試験は、感染症にかかりやすいかどうかを調べたものではありません。発熱や体調不良があるときは、医療機関にご相談ください。

Q. 免疫は、強ければ強いほどよいのですか?

そうとは限りません。先ほどの制御性T細胞の話のように、過度の免疫応答は、炎症やアレルギーの発端になると説明されています。「攻める」と「抑える」の両方があって成り立つしくみです。

Q. 食物繊維の多い食事で、最も重視した指標が変わらなかったなら、とらなくてもよいのでは?

1つの小さな試験で、とらなくてよいとは言えません。この試験でも、菌が持つ酵素の遺伝子が増えるなどの変化が報告されています。なお、食物繊維を急にたくさん増やすと、お腹が張ることがあります。少しずつ増やしましょう。

まとめ

この記事の要点は、次の3つです。

  • 腸は外から来たものと毎日向き合う場所で、多くの免疫細胞が集まっています。「約7割」は総説論文に書かれた目安です
  • 腸の中では、M細胞が取り込み、樹状細胞とT細胞に伝わり、IgAが作られる流れで免疫が働きます。腸内細菌もこのしくみの育ちに関わることが、主に動物の研究で報告されています
  • 人の研究は続いている段階で、特定の食品の効果や、病気を防げるかどうかは、まだ言えません

今日からできることは、次の食事で、みそ汁にきのこや海藻を入れる、または納豆を1品足すことです。

毎日の腸活に、ケストースを取り入れてみませんか

ここまでの内容は、腸と免疫についての研究の紹介です。ケストースの働きを示すものではありません。

ケストースは、善玉菌のエサになるオリゴ糖です。中屋商店のケストースは、3糖で構成される最小単位のオリゴ糖「ケストース」を100%配合しています。3g×30包入りで、1日1包を目安に、ヨーグルトや飲み物に加えてお使いいただけます。ほのかな甘みがあります。体質によっては、お腹がゆるくなることがあります。

毎日の食生活の工夫の1つとして、よろしければご覧ください。

価格などの詳細は、商品ページをご確認ください。

参考にした情報

  • Vighi G, et al. "Allergy and the gastrointestinal system." Clinical & Experimental Immunology. 2008;153(Suppl 1):3-6. https://doi.org/10.1111/j.1365-2249.2008.03713.x
  • Zheng D, Liwinski T, Elinav E. "Interaction between microbiota and immunity in health and disease." Cell Research. 2020;30:492-506. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7264227/
  • Lycke NY, Bemark M. "The role of Peyer's patches in synchronizing gut IgA responses." Frontiers in Immunology. 2012;3:329. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3500999/
  • Wastyk HC, et al. "Gut-microbiota-targeted diets modulate human immune status." Cell. 2021;184(16):4137-4153. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34256014/
  • 理化学研究所ほか プレスリリース「M細胞分化の分子メカニズムを解明」(2018年1月16日) https://www.riken.jp/press/2018/20180116_1/index.html
  • 理化学研究所ほか プレスリリース「腸内細菌が作る酪酸が制御性T細胞への分化誘導のカギ」(2013年11月14日) https://www.riken.jp/press/2013/20131114_1/

この記事は、食生活に関する一般的な情報をお伝えするものです。病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。体調に不安がある方、持病のある方、症状が続く方は、医師にご相談ください。

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