腸活の情報を見ていると、「短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)」という言葉に出会うことがあります。「善玉菌が作る成分」と紹介されることが多いのですが、名前に「脂肪」と付いているので、少し身構えてしまう方もいるかもしれません。
この記事で分かることは、次の3つです。
- 短鎖脂肪酸とは何か、どこで・何から作られるのか
- 代表的な3つ(酢酸・プロピオン酸・酪酸)の違い
- 研究で分かっていることと、毎日の食事で意識できること
研究論文と、理化学研究所・厚生労働省の健康情報サイトの情報をもとにお話しします。
短鎖脂肪酸は、大腸の菌が「食べ残し」を分解して作る成分
結論から言うと、短鎖脂肪酸は、私たちが消化しきれなかった食べものを、大腸にすむ菌が分解するときにできる成分です。
材料は、小腸で消化されずに届いた食物繊維など
食物繊維は、たんぱく質・脂質・糖質と違い、人の小腸では消化されず、大腸まで届く成分だと説明されています(厚生労働省の健康情報サイト)。
大腸には、たくさんの腸内細菌がすんでいます。腸内細菌がどんな菌のあつまりなのかは、腸内フローラの記事で詳しくまとめています。
大腸の菌たちは、届いた食物繊維や、消化されにくいオリゴ糖などをエサにして分解(発酵)します。このとき作られるのが短鎖脂肪酸です。研究論文では、短鎖脂肪酸は盲腸(小腸と大腸のつなぎ目にある、大腸の入り口の部分)と大腸の腸内細菌が、小腸で消化されずに届いた炭水化物から主に作ると説明されています。
たとえるなら、私たちが食べきれなかったものを、大腸の菌が「まかない」にして、そこから短鎖脂肪酸を作っているようなイメージです。

「短鎖」は、つながった炭素が少ないという意味
名前に「脂肪酸」と付いていますが、食事の油(脂肪)のことではありません。
脂肪酸は、炭素(C)がくさりのようにつながった形をしています。このくさりが短いものを「短鎖」と呼びます。酢酸は炭素2個、プロピオン酸は3個、酪酸は4個です。
ちなみに、酢酸は、お酢の酸っぱさのもとと同じ成分です。ただし、この記事でお話しするのは、お酢として口から入るものではなく、大腸の菌が作る短鎖脂肪酸です。
代表的な3つ:酢酸・プロピオン酸・酪酸
短鎖脂肪酸にはいくつか種類がありますが、大腸でできるものの大部分は、酢酸・プロピオン酸・酪酸の3つです。
研究論文によると、大腸と便の中では、酢酸:プロピオン酸:酪酸がおよそ60:20:20の割合で含まれています。いちばん多いのは酢酸です。
3つは、作られたあとに使われる場所が少しずつ違います。
| 種類 | 炭素の数 | 主に使われる場所(研究論文より) |
|---|---|---|
| 酢酸 | 2個 | 血液にのって全身へ。多くは肝臓に取り込まれ、残りは筋肉や心臓、脂肪組織などで使われる |
| プロピオン酸 | 3個 | 肝臓に取り込まれ、ブドウ糖を作る材料になる |
| 酪酸 | 4個 | 大部分が、大腸の内側の細胞のエネルギー源として使われる |
酪酸は、大腸の細胞の「ごはん」
3つのうち、腸の話でとくによく出てくるのが酪酸です。
研究論文では、大腸の内側をおおう細胞は、エネルギー源の多くを酪酸に頼っていると説明されています(同じ論文の中で、酢酸も同じくらい大切だという研究も紹介されています)。
つまり、大腸の菌が作った成分が、そのまま大腸の細胞のごはんになっている、ということです。人と腸内細菌が、持ちつ持たれつの関係にあることが分かります。
大腸の中でしっかり使われている
同じ論文によると、作られた短鎖脂肪酸の約95%は大腸の細胞にすばやく吸収され、便に出るのは約5%とされています。
また、短鎖脂肪酸を多く生む食物繊維は、大腸の中のpH(酸性・アルカリ性の度合い)を下げることも書かれています。

研究で分かってきたこと(主にマウスの研究です)
短鎖脂肪酸は、世界中で研究が進んでいる分野です。日本の研究機関からも、大きな発表がありました。ここでは、2つの研究を紹介します。
どちらもマウスを使った研究です。 人でも同じことが起きるのか、どのくらいの量で起きるのかは、まだ研究が続いている段階です。食品や商品の働きを示すものではない点に、ご注意ください。
ビフィズス菌が作る酢酸の研究(2011年)
理化学研究所などの研究グループは、無菌のマウスに特定のビフィズス菌を定着させる実験で、その菌が作る酢酸が腸の表面の細胞の抵抗力を高め、病原性大腸菌O157による感染死を防いでいたと発表しました(科学誌『Nature』に掲載)。人の食中毒を防ぐという話ではありません。
この研究では、同じビフィズス菌の仲間でも、大腸の奥でも酢酸を作れる菌とそうでない菌がいて、その違いが結果を分けたと考えられています。
酪酸と免疫の研究(2013年)
理化学研究所などの研究グループは、食物繊維の多いエサを与えたマウスでは、腸内細菌が作る酪酸が増え、その酪酸が「制御性T細胞」を増やしていたと発表しました(科学誌『Nature』に掲載)。
制御性T細胞は、免疫の働きが行き過ぎないように、ブレーキをかける役目をもつ細胞です。この研究は、食べたもの → 腸内細菌 → 作られる成分 → 体のしくみ、というつながりをマウスで示した研究です。
毎日の食事で意識できること:菌の「エサ」を届ける
短鎖脂肪酸は、大腸の菌が作るものです。ですから、毎日の食事で意識できるのは、菌のエサになる食物繊維やオリゴ糖を、大腸まで届けることです。
こうした「善玉菌のエサになる食品成分」は、プレバイオティクスと呼ばれます。菌そのもの(プロバイオティクス)との違いは、「エサ」と「菌そのもの」を整理した記事をご覧ください。
食物繊維やオリゴ糖を含む食品には、たとえば次のようなものがあります(中屋商店からの一例です)。
- 主食:麦ごはん、玄米、全粒粉のパン、オーツ麦
- 野菜・いも:ごぼう、玉ねぎ、ブロッコリー、さつまいも
- 豆・きのこ・海藻:納豆、煮豆、しいたけ、わかめ
- 果物:バナナ、りんご、キウイフルーツ
いつもの献立を大きく変えなくても、ごはんに麦を混ぜる、みそ汁の具をきのこや海藻にするなど、1品を置きかえるだけでも取り入れられます。
食物繊維には「水溶性」と「不溶性」があり、働きが少し違います。詳しくは、下の関連記事でまとめています。

よくある疑問
Q. 「脂肪酸」と付いていますが、太る原因になりませんか?
短鎖脂肪酸は、食事でとる油(脂肪)とは別のものです。名前の「脂肪酸」は、成分の形(化学的なつくり)からきています。体重にどう影響するかは、この記事の出典では確かめていないため、ここでは触れません。
Q. 短鎖脂肪酸そのものを食べたほうが早いのでは?
この記事で紹介したのは、大腸の中で菌が作る短鎖脂肪酸についての研究です。短鎖脂肪酸そのものを口からとった場合にどうなるかは、この記事の出典では扱っていません。この記事でお伝えしたいのは、菌のエサになる食物繊維やオリゴ糖を、毎日の食事で意識してとる、という点です。
Q. 食物繊維を急に増やしたら、お腹が張りました。
食物繊維やオリゴ糖は、大腸で菌に分解されるときに、ガスが出ることがあります。急にたくさんとると、お腹が張ったり、ゆるくなったりすることがあります。少しずつ増やすのがおすすめです。お腹の不調が続く場合は、医療機関で相談してください。
まとめ
この記事の要点は、次の3つです。
- 短鎖脂肪酸は、小腸で消化されずに大腸へ届いた食物繊維やオリゴ糖を、大腸の菌が分解して作る成分です
- 代表は酢酸・プロピオン酸・酪酸で、大腸ではおよそ60:20:20。酪酸は大腸の細胞のエネルギー源として使われます(酢酸も同じくらい大切だという研究もあります)
- マウスの研究では、腸内細菌が作る酢酸や酪酸が、体のしくみに関わることが報告されています。人での研究は続いている段階です
今日からできることは、次の食事で、ごはんに麦を混ぜる、みそ汁にきのこや海藻を入れるなど、菌のエサになる食品を1品足すことです。
関連する記事も、あわせてご覧ください。
毎日の腸活に、ケストースを取り入れてみませんか
ここまでの内容は、短鎖脂肪酸についての研究の紹介です。ケストースの働きを示すものではありません。
ケストースは、善玉菌のエサになるオリゴ糖です。中屋商店のケストースは、3糖で構成される最小単位のオリゴ糖「ケストース」を100%配合しています。3g×30包入りで、1日1包を目安に、ヨーグルトや飲み物に加えてお使いいただけます。ほのかな甘みがあります。体質によっては、お腹がゆるくなることがあります。
毎日の食生活の工夫の1つとして、よろしければご覧ください。
価格などの詳細は、商品ページをご確認ください。
参考にした情報
- den Besten G, et al. "The role of short-chain fatty acids in the interplay between diet, gut microbiota, and host energy metabolism." Journal of Lipid Research. 2013;54(9):2325-2340. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3735932/
- 理化学研究所ほか プレスリリース「ビフィズス菌の作る酢酸がO157感染を抑止することを発見」(2011年1月27日) https://www.riken.jp/press/2011/20110127_2/index.html
- 理化学研究所ほか プレスリリース「腸内細菌が作る酪酸が制御性T細胞への分化誘導のカギ」(2013年11月14日) https://www.riken.jp/press/2013/20131114_1/
- 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「食物繊維」(執筆:清水純 城西大学薬学部 教授、2026年2月16日更新) https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-016.html
この記事は、食生活に関する一般的な情報をお伝えするものです。病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。体調に不安がある方、持病のある方、症状が続く方は、医師にご相談ください。