ヨーグルトのパッケージや健康番組で、「プロバイオティクス」という言葉を見かけることが増えました。
でも、「乳酸菌のこと?」「納豆やぬか漬けもプロバイオティクスなの?」と聞かれると、はっきり答えるのは意外と難しいものです。
この記事で分かることは、次の3つです。
- 「プロバイオティクス」とは何か。発酵食品とはどう違うのか
- ヨーグルト・納豆・ぬか漬けでは、それぞれどんな菌が働いているのか
- 食べた菌は腸に住みつくのか。毎日の食事にどう取り入れればいいか
国際的な学会や、国の機関の資料に書かれていることをもとにお話しします。
プロバイオティクスとは、体によい働きが研究で示された「生きた菌」のこと
プロバイオティクスとは、ひとことで言うと「適切な量をとったときに、健康によい働きをもたらす生きた微生物」のことです。
これは、プロバイオティクスの研究者が集まる国際学会「ISAPP(国際プロバイオティクス・プレバイオティクス科学協会)」が、合意声明(2014年)でまとめている定義です。厚生労働省の統合医療情報発信サイト(eJIM)でも、「健康上の利益が得られると考えられている生きた微生物」と説明されています。
定義の中の、3つの言葉に注目
この定義には、大事な言葉が3つ入っています。
- 生きた:生きている菌であること
- 適切な量:ただ入っていればよいのではなく、研究で確かめられた量であること
- 健康によい働き:その働きが、研究で示されていること
つまりプロバイオティクスは、「菌が入っている食品」全般を指す言葉ではありません。どんな菌を、どれくらいとると、どんな働きがあるのか。そこまで研究で調べられた菌のことを言います。
「菌そのもの」と「菌のエサ」は別のもの
よく似た言葉に「プレバイオティクス」があります。こちらは、腸にすむ菌のエサになる成分のことで、オリゴ糖や食物繊維などがその例です。
プロ(菌そのもの)とプレ(菌のエサ)の違いは、こちらの記事で詳しくまとめています。
発酵食品が、すべてプロバイオティクスとは限らない
ここでよくある誤解が、「発酵食品=プロバイオティクス」という考え方です。ISAPP は、発酵食品とプロバイオティクスは同じものではない、とはっきり説明しています。

発酵食品は「菌の力でつくった食品」
発酵食品とは、菌が増えたり、食品の成分を変化させたりする働きを利用して、つくられた食品のことです。みそ、しょうゆ、パン、ヨーグルト、納豆、ぬか漬けなどがそうです。
ポイントは、「つくる途中で菌が働いた」ことと、「食べるときに菌が生きている」ことは、別の話だということです。
加熱や殺菌で、菌がいなくなることもある
ISAPP の資料によると、発酵食品の中には、つくったあとに殺菌・加熱・燻製・ろ過などの工程を通るものがあります。こうした工程で、菌が死んだり、取り除かれたりすることがあります。その場合、発酵食品であっても、生きた菌をとる食品にはならないことがあります。
生きた菌がいても、それだけでは呼べない
また、生きた菌が残っている発酵食品でも、その菌の働きが研究で確かめられていなければ、「プロバイオティクス」の基準には届かない場合がある、と ISAPP は説明しています。
ただし、これは発酵食品の価値を下げる話ではありません。ISAPP の資料にも、発酵食品は生きた菌をとる食品になり得る、と書かれています。「プロバイオティクス」という言葉の使い方は、それだけ厳密だ、と受け止めてください。
「乳酸菌なら何でも同じ」ではない
もう1つ知っておきたいのは、同じ「乳酸菌」でも、菌の種類によって性質が違うことです。ISAPP の資料には、「すべてのプロバイオティクスが同じわけではない」ことに、科学者の意見は一致していると書かれています。
菌は、同じ仲間の中でも、さらに細かい種類(「株(かぶ)」と呼びます)に分かれます。人にたとえると、「乳酸菌」は名字、「株」は一人ひとりの名前のようなものです。同じ名字でも、性格は人それぞれ。研究で働きが調べられているのは、こうした一つひとつの株です。
ヨーグルト・納豆・ぬか漬けでは、別々の菌が働いている
では、身近な発酵食品では、どんな菌が働いているのでしょうか。ここでは、ヨーグルト・納豆・ぬか漬けの3つを見てみます。

ヨーグルト:乳酸菌でつくる。日本では菌の数にきまりがある
ヨーグルトは、牛乳などを乳酸菌で発酵させた食品です。日本では、国のきまり(乳等省令)で、ヨーグルトのような食品は「発酵乳」という名前で扱われます。
昔からヨーグルトづくりに使われてきた代表的な乳酸菌は、ブルガリア菌とサーモフィラス菌の2つです。明治のヨーグルトライブラリーによると、この2つは一緒にいると、お互いに必要なものをつくり合い、助け合って短い時間で増える性質があります。
また、日本の発酵乳には、乳酸菌の数(または酵母の数)が1mLあたり1,000万以上という規格があります(業界団体が厚生労働省に出した資料に記載されている規格)。
なお、使われている菌の種類や、食べるときに菌が生きているかどうかは、商品によって違います。
納豆:枯草菌の仲間「納豆菌」でつくる
納豆をつくる菌は、納豆菌です。京都大学の研究紹介によると、納豆菌は枯草菌(こそうきん)の一種で、もとは枯れた草などの中で生きている菌です。蒸した大豆の上でよく増え、大豆を納豆に変えていきます。
納豆菌は、胞子(ほうし)をつくる菌でもあります。胞子とは、菌が厳しい環境を乗り切るためにつくる、殻に包まれた「休眠中の姿」のようなものです。
気をつけたいこと:血液を固まりにくくする「ワルファリン」という薬を飲んでいる方は、納豆を控えるよう指導されます。医薬品医療機器総合機構(PMDA)によると、納豆に含まれるビタミンKや、大腸でビタミンKをつくる納豆菌が、薬の働きを弱めてしまうためです。薬を飲んでいる方は、医師や薬剤師の指示に従ってください。
ぬか漬け:乳酸菌と酵母、2種類の菌が働く
ぬか漬けは、米ぬかでつくった「ぬか床」に、野菜を漬けてつくる日本の伝統的な発酵食品です。福島大学の資料によると、ぬか漬けは主に乳酸菌と酵母の発酵によって、あの特有の酸味や香りが生まれます。
酵母は、パンやお酒づくりにも使われる菌の仲間です。乳酸菌と酵母、2つの菌が一緒に働いているのが、ぬか漬けの特徴です。
気をつけたいこと:漬物やみそなどは、塩分にも目を向けたい食品です。農林水産省によると、1日の食塩の目標量は、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満です(日本人の食事摂取基準2025年版)。一方で、日本人の1日の食塩摂取量の平均は9.8gでした(令和5年国民健康・栄養調査)。食べる量は、ほかの料理の塩分と合わせて考えてみてください。
食べた菌の多くは、腸に住みつかずに「通り過ぎていく」
ここで、多くの方が気になる疑問があります。「ヨーグルトを食べたら、その菌は腸に住みつくの?」という点です。

通常は、腸に住みつかない
ISAPP の資料には、プロバイオティクスは通常、腸内に定着しないと書かれています。「定着」とは、腸に住みついて、そのまま暮らし続けることです。
食べた菌は、お腹の中を旅するように通っていき、多くはやがて体の外へ出ていきます。
通り過ぎるあいだに、関わり合っている
では、住みつかないなら意味がないのでしょうか。ISAPP の資料では、プロバイオティクスは腸を通るあいだに、腸の細胞や、腸にもとからいる菌などと関わり合っていると説明されています。
たとえるなら、腸にとって食べた菌は「住人」ではなく、「通りかかる旅人」のようなものです。住みつかなくても、通りかかるあいだに出会いがある、というイメージです。
だから「毎日続ける」という考え方になる
国際酪農連盟の資料(日本語の仮訳)にも、大半のプロバイオティクスは腸に恒久的に定着しないと考えられている、と書かれています。そのうえで、毎日とることが大切と考えられている、と説明しています。
一度にたくさん食べて終わり、ではなく、毎日の食事の中で、無理なく続ける。プロバイオティクスについては、こうした考え方が示されています。菌を含む食品を食卓にとり入れるときも、続けやすさを大切にするとよいでしょう。
「たくさんとるほどいい」わけではない
ISAPP の資料には、菌の数が多いほど効果が大きくなるわけではない、とも書かれています。大切なのは、研究で確かめられた量と、菌の種類です。食品の場合も、量を増やすことより、続けやすさを大事にしてください。
毎日の食事に、どう取り入れる?
ここからは、研究の話ではなく、毎日の食卓の話です。

いつもの献立に「1品」足す
特別なことをするより、いつもの食事に、菌の働きでつくられた食品を1品足すのが続けやすい方法です。
- 朝ごはん:ヨーグルトにバナナなどの果物をのせる。ごはんの日は納豆を1パック
- お昼・夕ごはん:みそ汁や、少しのぬか漬けを添える
- 間食:甘いお菓子の代わりに、プレーンヨーグルトを選ぶ日をつくる
1つの食品に偏らず、いろいろな種類を
ヨーグルト・納豆・ぬか漬けでは、働いている菌が違いました。どれか1つにこだわるより、いろいろな発酵食品を、無理のない範囲で食卓にのせてみてください。
あわせて、野菜・豆・海藻・きのこなど、菌のエサになる食物繊維を含む食品も意識すると、食卓のバランスがとりやすくなります。腸にすむ菌については、腸内フローラの記事で詳しくお話ししています。
気をつけたいこと
- 漬物・みそなど塩分を含む食品は、食べる量に気をつけてください
- 薬を飲んでいる方、持病のある方は、食事の変え方について医師にご相談ください
- eJIM では、重い病気の方や免疫の働きが弱っている方ほど、プロバイオティクスによる好ましくない影響のリスクが大きくなる、と説明されています。サプリメントを考えている方は、まず医療スタッフに相談するよう案内されています
- お腹の不調が続くときは、食品で何とかしようとせず、医療機関を受診してください
よくある疑問
Q. 加熱した菌や、死んだ菌は意味がないのですか?
この記事で「意味がある・ない」と言い切ることはできません。まだ研究が進められている分野です。なお、加熱などで死んだ菌は、「生きた菌」という定義に当てはまらないため、プロバイオティクスとは呼びません。ISAPP は、生きていない菌やその成分で、健康によい働きをもたらすものを「ポストバイオティクス」と呼ぶ定義を、2021年に示しています。
Q. 納豆とヨーグルト、どちらを食べればいいですか?
どちらか一方を選ぶ必要はありません。働いている菌が違うので、好みや食事のスタイルに合わせて、無理なく続けられるものを選んでください。ワルファリンを飲んでいる方は、先ほどお伝えしたとおり、納豆について医師や薬剤師の指示に従ってください。
Q. ヨーグルトは、毎日たくさん食べたほうがいいですか?
この記事で紹介した資料では、菌の数が多いほどよいわけではないとされています。たくさん食べることより、毎日の食事の中で無理なく続けることを大事にしてください。
まとめ:菌の入った食品は「毎日、いろいろ、無理なく」
この記事の要点は、次の3つです。
- プロバイオティクスは、適切な量をとったときに健康によい働きが研究で示された「生きた菌」のこと。発酵食品が、すべてプロバイオティクスとは限りません
- ヨーグルトは乳酸菌、納豆は納豆菌、ぬか漬けは乳酸菌と酵母。身近な発酵食品でも、働いている菌はそれぞれ違います
- 食べた菌の多くは、腸に住みつかずに通り過ぎていきます。プロバイオティクスは毎日とることが大切と考えられていて、食卓でも「一度にたくさん」より「無理なく続ける」がおすすめです
今日からできることは、明日の朝ごはんに、ヨーグルトか納豆を1品足してみることです。
関連する記事も、あわせてご覧ください。
毎日の腸活に、ケストースを取り入れてみませんか
ここまでの内容は、プロバイオティクスと発酵食品についての一般的な情報です。ケストースの働きを示すものではありません。
ケストースは菌そのものではなく、善玉菌のエサになるオリゴ糖です。中屋商店のケストースは、3糖で構成される最小単位のオリゴ糖「ケストース」を100%配合しています。3g×30包入りで、1日1包を目安に、ヨーグルトや飲み物に加えてお使いいただけます。ほのかな甘みがあります。
価格などの詳細は、商品ページをご確認ください。
この記事は、食生活に関する一般的な情報をお伝えするものです。病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。体調に不安がある方、持病のある方、症状が続く方は、医師にご相談ください。
参考にした情報
- ISAPP「A roundup of the ISAPP consensus definitions」(Hill et al. 2014/Salminen et al. 2021/Marco et al. 2021 の定義)https://isappscience.org/a-roundup-of-the-isapp-consensus-definitions-probiotics-prebiotics-synbiotics-postbiotics-and-fermented-foods/
- ISAPP「プロバイオティクス:よくある誤解」日本語版(2020)https://isappscience.org/wp-content/uploads/2020/06/Pro_Myths_Japanese.pdf
- 厚生労働省 eJIM「経口プロバイオティクス」https://www.ejim.mhlw.go.jp/public/overseas/c02/09.html
- 国際酪農連盟(IDF)FAQ 日本国内委員会 仮訳 https://www.j-milk.jp/jidf/wp-content/uploads/2015/06/j-probiotics.pdf
- 一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会「低温発酵乳の成分規格に係わる培養温度に関する要望書」(2014年・厚生労働省 審議会資料)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000036811.pdf
- 明治ヨーグルトライブラリー「ヨーグルトの成分」https://www.meiji.co.jp/yogurtlibrary/laboratory/yogurt/02/01/
- 京都大学「大豆と納豆菌のせめぎ合いの仕組みを解明」(2020)https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2020/201029_2.html
- 木村啓太郎「納豆研究の新展開〜納豆菌とファージの共進化から探る〜」生物工学会誌 90(6) https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9006/9006_tokushu-2_3.pdf
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)くすりQ&A「ワルファリンを飲んでいますが、納豆、クロレラ、青汁などの摂取を避けるように指導されました」https://www.pmda.go.jp/safety/consultation-for-patients/on-drugs/qa/0016.html
- 福島大学 プレス発表資料「福島県の発酵物から分離された乳酸菌を用いた『ぬか漬け盛り合わせ』の発売」(2026)https://www.fukushima-u.ac.jp/press/Files/2026/08/206_02.pdf
- 農林水産省 みんなの食育ナビ(食塩の目標量)https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics5_04.html